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「北京、消えゆく胡同」

 

 

北京特有の古い路地を「胡同(フートン)」という。

 

元・明・清の3王朝を通じて整備され、人々の生活と文化を育んできた。

その胡同が近年の再開発で次々と取り壊され、現代的なビル群に建て替えられている。

 

胡同には四合院が立ち並んでいる。真中に庭を囲み東西南北に平屋の建物がある住宅である。

解放以前は一世帯が一戸の四合院を私有していたが、新中国成立後は没収され、数世帯が雑居するようになった。

 

それぞれの世帯が庭の共用スペースに台所や部屋を増築しているので、院内は実に混沌としていて、1人あたりの居住スペースは狭い。

 

胡同の住民は移転に際し政府から補償金を支給されるが、支給される金額は十分ではなく、多くの住民は市の中心部から遠く離れた北京郊外に移転せざるをえない。

 

土地は国家の所有物、北京の大改造は市政府の決定に基づいて粛々と作業は進められる。

人々の不満をも抱えながら…。

 

胡同は通路ではなく生活の場である。タバコ屋のおじいさんが、店番を兼ね、路上でキセルを吹かしている。

小さな女の子がお母さんに見守られながら自転車乗りの練習をしている。

 

男達は上半身裸で、中国将棋に熱中している。ゆったりとした時間の流れ。

形は違えど、何百年にも渉って、北京の胡同にはこうした生活リズムが流れていたのだろう。

胡同が消え去り高層マンションが建設され、旧住民が郊外に移転し、裕福な新住民が転入し…。

 

700年の歴史がある胡同の生活形態が確実に消えつつある。

 

 

 

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