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写真ギャラリー巡り

今日は終日ギャラリー巡り。

浅草のPIPPO→京橋のツァイト→六本木のZEN FOTO GALLERY→東麻布のP.G.Iの順に四軒見て廻った。

ツァイトとP.G.Iはオリジナルプリント販売では老舗。

PIPPOは以前P.G.Iにいた方が運営に関わっている新しいギャラリー。

ZEN FOTOは外国人が運営していてアジアの作家を取り上げることが多い。

いずれも、写真プリントを取り扱うギャラリーとして知られている。

最初に行ったPIPPOは寿司屋の二階の小さなギャラリーで、現在グループ展を開催中。

フロアの半分は貸し暗室になっていて、ギャラリー部分は、そんなに広くはない。

今や少数派のモノクロプリント愛好者には、心地よい空間で、床にはドライマウントプレス機が展示品の様に置いてある。

私が行った時は貸し暗室利用者の若い女性が二人出入りしていた。

以前はお座敷暗室、お風呂場暗室で写真を焼いていた時期もあったが、今やフィルムの仕事は皆無になった。引き伸ばし機やバットこそまだ手放してないが、最近は写真展もやらないし、自宅でプリントを焼く機会もない。

多少料金はかかるが、貸し暗室で必要な分だけプリントをする方が合理的で良いと思う。

今日のグループ展はすべて11×14サイズで、モノクロプリントがメインだが、この写真たちも、この貸し暗室で焼かれたのだろうか。

ギャラリー運営者と写真家双方に利があって、良いやり方だと思う。

このギャラリーは写真家の育成にも力を入れているようで、海外事情やオリジナルプリントに関するワークショップもやっている。

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二軒目は京橋のツァイトフォトサロンで、橋本照嵩写真展『琵琶法師 野の風景』。

ここに去年来た時は北井一夫さんをやっていたが、今回は写真集『瞽女』んで有名な橋本さん。

若いころこの写真集を見て強く心揺さぶられた記憶があり、お顔こそわからないが、橋本照嵩というお名前だけは、伝説のように記憶に残っていた。

会場に年配の男性がいたので「大変失礼ですが、もしかしたら作者ご本人ですか?」と尋ねるとやはりそうだった。橋本さんはとても気さくで、ただの散歩人の私にも30分以上付き合ってくれた。

今回の写真展示は1977年に写真展の際に焼いたプリントだそう。40年近く前のバライタプリントで、状態に微妙なバラツキはあるが、それがまた味になり、オリジナルプリントの価値を高めている。

琵琶法師や秋田万歳など、放浪芸的な写真もあるが、それ以外に人気のない草むらの風景写真が多く展示されている。

橋本さんによると、被写体の「周辺のもの」を多く撮るようにしていたそうだ。風土全体を掬い取る、というのだろうか…。

消えてしまった芸能などももちろん貴重だが、誰も目を向けなかったような何気ない風土の写真も、今から振り返ると、貴重な記録と思える。

橋本さんが若い頃は雑誌全盛だったため、今のようにオリジナルプリントを売るという発想自体が無かったに違いない。

雑誌掲載用に当時出版社に預けたプリントも、そのまま返却されずに紛失しているケースも多いという。昔はオリジナルに対する意識が低かったので、ぞんざいに扱われることも多かっただろうと推測する。良質のバライタ印画紙自体が入手困難な今となっては、もったいない話に思える。

ちょうど日本の農村が、急激に変化した時代に活躍した世代なので、今後もますます価値が高まるだろう。ギャラリーを通じて、海外の顧客に売られるケースも多いらしい。

日本では写真は売れないといわれてきたが、最近はウェブ販売も含めて、海外への扉も開かれてきているように思う。橋本さんや北井さんなど70年代初頭に雑誌で活躍した世代は、改めて注目を集めるのではないだろうか。

橋本さんの写真展は今月27日(土)まで。あと3日だが、ぜひ一度足を運んで頂きたい。

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三軒目は六本木のZEN FOTO GALLARYで、香港の写真家・陳偉江の写真展『油麻地』。

油麻地とは香港・九龍半島側にある地名で、多分そこで撮られたストリートスナップ作品が並んでいた。

会場では、この作家の過去の作品集も会場で売られていたが、性的なかなりきわどい写真も多い。

日常と写真が一体化したような写真家で、アラーキーが言うような「私写真」の作家だと思う。

ZEN FOTOはネット上での販売サイト「Shashasha(写々者)」も運営している。外国人が運営している分、より海外への発信力が強そうな気がするが、どうだろうか。

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最後は東麻布のP.G.I。昨年芝浦から移転して、写真のビルの3階に入っている。

オートロックのマンションなので、1Fでボタンを押して開けてもらわないといけないが、3Fに上がると明るく開放的な印象。以前と違いワンフロアだが、芝浦時代より広くなったように思う。

ここは以前から写真の保存用品やオルタナティブ・プロセスの関連薬品にも力を入れていて、フロアの三分の一はショップになっている。

ブックマットや額装などもやってくれる。

ちょうど今度プリントの額装をお願いしようと思っていたので、お店のスタッフに話しかけが、とても親切な対応だった。

一般にギャラリーというと、それ相応の上流階級?が顧客である訳で、気楽に話しかけにくいものだが、ここはショップ販売コーナーがある分、話しかけやすい。

実は以前も芝浦時代も、プラチナプリントについて尋ねた事があったが、スタッフさん自身も作品作りをしているらしく、親切に教えて頂いた。

ギャラリースペースの方は、大御所・川田喜久治さんの展示をやっていた。

以前何かの文章で読んだが、マイケル・ケンナみたいな著名写真家も、最初は安い価格で写真を売っていたそうである。継続して作り続けることが重要だとも。

多分70年代までは、アメリカでも今みたいな写真市場は無かったのではないかと思う。

そう考えると、日本でも30年後40年後には欧米みたいな写真市場が広がるかもしれない。

むしろ、メーカーギャラリーが多い現状から、作品販売するという意識が低い写真家が多い気がする。戦後、雑誌メディアを中心に写真界が広がったからなのか…。

しかし、最近は自身のウェブサイトで作品を販売する人も出てきた。簡単に手作りショッピングサイトを作れるような今、発信力のある写真家は百花斉放的に、どんどんマーケットを開拓すれば面白いように思う。

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